海津市議会 令和7年 第3回定例会 一般質問 北村富男議員

海津市

概要

海津市の令和7年第3回定例会の一般質問において、北村富男議員は「企業誘致の取組と今後の戦略」について質問した。

答弁では、現在進行中のプロジェクトがもたらす成果と、今後のまちづくりにおける課題が明確になった。

駒野工業団地では、ジーテクトの中部工場が稼働を開始し、湖池屋の新工場も12月の操業開始に向けて建設が進んでいる。これら2社の投資総額は第1期だけで300億円に達し、将来的な雇用規模は500人に及ぶ見込みだ。また、南濃町太田でも新たな工場進出が決定しているほか、海津スマートインターチェンジ周辺における新たな工業団地の実現に向けた準備が着実に進められており、地域経済を活性化する起爆剤として大きな期待が寄せられている。

一方で、企業誘致の成果を市民に還元できるかが課題として浮かび上がった。市は企業誘致と住環境施策を一体的に進める方針を示したが、子育て支援や公共交通との連携を含めた実効性が問われる。

質問と回答

質問1

スマートインターチェンジ周辺エリアにおける企業誘致のこれまでの取組と成果、今後の計画を聞かせてほしい。

回答: 駒野工業団地では、ジーテクトが4月に稼働を開始し、湖池屋が12月の操業開始に向けて建設が進んでいる。2社の投資総額は第1期で300億円、将来の雇用規模は500人を見込む。新たに南濃町太田において猛鋼鉄の工場建設が令和8年2月の操業開始に向けて進んでおり、投資額は約11億円、25人の雇用を見込む。また、スマートインターチェンジ周辺の新規工業団地の候補地である戸田地区において地質・水質の調査が完了し、整備可能と判断された。今後、官民連携による整備方針を策定した上で、民間事業者を公募し、新規工業団地の実現に向けて取り組む。

質問2

企業誘致は第2次総合計画後期基本計画でどのような位置づけか。また、住環境・子育て環境・公共交通との連携をどのように考えるか。

回答: 同計画においても重点施策として位置づけている。企業誘致は子育て支援や住環境の整備、公共交通の維持・確保などの幅広い施策と連携させながら、一体的なまちづくりを目指す必要があると考えている。

質問3

市民の声を計画段階から取り入れる仕組みが必要ではないか。

回答: 企業誘致を含めた幅広い分野に対する幅広い世代の声を計画段階から取り入れ、次期総合計画に反映していく考えだ。すでに7月には海津明誠高等学校の生徒を対象としたワークショップを実施した。今後は中学生や市民を対象にワークショップを開催するほか、市民アンケートや市民協働団体へのヒアリングを通じて様々な意見を取りまとめ、次期計画に反映させる。

質問4

東海環状自動車道の全線開通はいつ頃の予定か。

回答: 養老トンネルで相当量の湧水が発生し続けており、対策に時間を要しているため、現時点では工事の完了時期が見通せない。今後、工事の進捗を踏まえた上で開通時期を改めて公表する。

質問5

今後の企業誘致を進めるにあたり、進出した企業から寄せられた本市への評価(魅力と課題)が知りたい。

回答: 魅力としては、区画の大きさが希望に近かったこと、名古屋の取引先への近さ、開通予定の東海環状自動車道のスマートインターチェンジへの近さ、堤防より1メートル高い地盤による水没リスクの低さが挙げられた。課題としては、軟弱地盤、国道からのアクセスの不便さ、地下水の水質が風評ほどよくなかった点が挙げられた。

質問6

土地利活用推進本部でこれまで検討された課題と内容が知りたい。

回答: 令和4年度に立ち上げ、主には市有地の活用と新規工業団地のありかたについて検討してきた。新規団地については、産業誘導ゾーン内の優先候補地の選定、農地規制の解除方法、整備手法の3点が主な課題だった。令和4〜5年度の3回の会議を経て、優先候補地は南濃町戸田地区に決定し、農地規制の解除方法は農村産業法に基づく実施計画・産業導入実施計画に従うことに決定し、整備手法は官民連携方式に決定した。

質問7

企業ニーズを把握するためのアンケートやヒアリングは新たに行われたか。

回答: 令和4年度に企業アンケートとヒアリングを実施した。アンケートはスマートインターチェンジ周辺に新工業団地を整備する必要があるかどうかを判断するために実施し、約100件送付して18件の回答があり、約8割がスマートインターチェンジ周辺を良好な立地環境と評価し、そのうちの約4割が条件によっては整備を検討したいと回答した。実地ヒアリングは29社(主にデベロッパー・ゼネコン)で、約5割がスマートインターチェンジ周辺は魅力的で、広い土地であるほどよいとの意見だった。

質問8

これまでに問合せや相談はどのような内容でどれくらいあったか。

回答: 企業から進出用地・拡張用地の照会は毎年一定数ある。戸田候補地については事業連携パートナーの募集前のため現時点で明確な問合せはないが、東海環状自動車道の全線開通による取引先との距離短縮や取引拡大への期待の声はよく耳にする。こうした背景から、ゼネコン数社とスマートインターチェンジ周辺の開発可能性についての意見交換会を何度か開催した。

質問9

ゼネコンとの意見交換会は、具体的な進出計画として進んでいるのか。

回答: 具体的な進出計画ではない。市からプロの知見を教わる形で意見交換を行っている。

質問10

戸田地区が39.5haになった経緯が知りたい。他にも候補地はあったのか。

回答: 産業誘導ゾーン内の複数候補地から形状、面積、インフラ、地盤、地元意向を総合的に評価して戸田地区に絞り込んだ。39.5haという面積は、地権者・地域住民から「戸田地区の隅々まで対象にしてほしい」という強い要望があったことが一因となっている。

質問11

地域・地権者の賛同によって40haまで広がったという認識でよいか。

回答: そのような認識でよい。

質問12

40ha以上を必要とする企業が来た場合、さらに拡張する可能性はあるか。

回答: 面積が40haを超えると環境アセスメント調査が必要になるため、40ha手前が適切な数字。ただし、優良企業からの申出があれば官民連携協議の中で拡張を地元に申し出る可能性もあり得る。

質問13

候補地内に未相続の土地があると聞くが、どのくらいあり、解消方法はどのように考えているか。

回答: 未相続の民有地が約50筆、合計約1.9haある。法務局に相談しながら適切な登記方法を調査・研究している。

質問14

前回の答弁では企業誘致のターゲットとして自動車関連産業、物流業、豊富な地下水を必要とする業種が挙げられたが、現在もその方向で進めているか。

回答: 開発整備方針の公表が本格的な誘致活動の節目と捉えており、依然としてターゲットは自動車関連産業、物流業、豊富な地下水を必要とする業種(食料品加工業、半導体製造業など)を想定する。

質問15

住環境整備について企業誘致とどのように連携させるか。

回答: 宅地造成補助金、集合住宅建設補助金、空き家リフォーム補助金など既存制度を活用するほか、企業が希望する場合は市有地から社宅用地を提案することも想定する。各担当部署と連絡・調整を密にして取り組む。

質問16

これまでのワークショップで企業誘致を含むまちづくりについてどのような提案があったか。

回答: 観光資源の活用、住環境整備、交通インフラ改善、企業誘致など多岐にわたる提案があった。企業誘致に絞ると、自動車関連企業、食品加工業、物流センター、大規模商業施設など多くの業種が挙げられており、関心の高い分野であることが確認できた。

感想

企業誘致の成果を、いかに市民に還元できるか

今回の質疑を通じて企業誘致が着実に進んでいることは確認できたが、その成果が市民の利益につながるのかという点については依然として不透明な部分が多い。

企業誘致の主なメリットは、将来的な法人市民税や固定資産税などの税収増にある。しかし、その税収を得るために、市は道路や下水道の整備といった相応の行財政コストを支払っているはずだ。投入した公費に対して、どれほどの利益が市民に還元されるのか、その費用対効果は見えない。

また、数百人規模の雇用が創出されたとしても、それが市内の求職者や定住に結びつく保証はない。単に市外からの通勤者が増えるだけでは、土地の持ち主や特定の業者に利益が偏り、一般の市民は渋滞や環境変化といった負の側面だけを被る恐れもある。

重要なのは、「300億円の投資」という景気の良い数字に目を奪われるのではなく、その投資をいかに「子育て支援」や「公共交通の維持」といった具体的な住民サービスに還元できるか。その推移を冷静に注視したい。

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