概要
海津市の令和7年第3回定例会の一般質問において、橋本武夫議員は「こどもの権利条例」と「地方創生2.0の取組」の2点について質問した。
こどもの権利条例については、橋本議員が制定を求めて質問した。市は、条例の制定については必要性・実効性の面から調査・研究を慎重に進めると回答しつつも、策定中の「子ども計画」において、アンケートやワークショップを通じ、子どもの意見を積極的に施策へ反映させていく方針を改めて示した。
地方創生2.0については、依然として20代・30代の日本人の流出が深刻である(直近の3年間で700人超の流出が発生している)一方で、外国人の転入超過が全体の数字を押し上げている実態が浮き彫りとなった。
市はこうした状況を深刻に受け止めており、次期総合計画の重点として「女性の活躍支援・子育て支援」「市民との共創」「移住・定住促進」の3点を掲げ、女性の活躍支援については来年度当初予算に盛り込む方針を示した。
質問と回答
質問1
こどもの権利条例を制定する考えはあるか。
回答: 今年度末までに「こども基本法」に基づく「子ども計画」を策定し、子ども政策を推進したいと考えている。条例の制定については必要性・実効性を研究する。
質問2
こども計画には、子どもや若者・保護者の意見をどのように取り入れるか。
回答: 今年7月頃、小学5年生と中学2年生と保護者にアンケートを実施し、若者は高校生から39歳までを対象にアンケートを実施した。今後は、パブリックコメント、子育て支援団体ワークショップ、子ども・子育て支援会議で意見を収集する。
質問3
こどもの権利条例について研究する期間の終了時期はいつか。
回答: 明確な終了時期を示すことは難しい。条例の必要性・実効性を慎重に検討するには、十分な時間が必要だと認識している。
質問4
こどもの権利条例を議員提案として制定しようとした場合、市はどのように関わるか。
回答: それまでの研究結果を踏まえた意見調整が行なわれた上で議員提案で作成されるのであれば、作成に向けて協力する。
質問5
これまでの地方創生の取組をどう評価しているか。
回答: 人口減少に歯止めがかかっていない状況を深刻に受け止めている。その根拠として、合計特殊出生率は県内最低の1.15であること、消滅可能性自治体に分類されていること、市全域が新たに過疎地域に指定される見込みであることが挙げられる。
質問6
近年の20代、30代の転入・転出状況が知りたい。
回答: 令和4年度は-36人(男+22、女-58)、令和5年度は-110人(男-36、女-74)、令和6年度は-138人(男-79、女-59)となっている。日本人に絞ると令和4年度は-218人(男-92、女-126)、令和5年度は-242人(男-118、女-124)、令和6年度は-243人(男-140、女-103)となっており、近年増加する外国人の転入超過が全体の数字を押し上げている。
質問7
地方創生2.0の取組において重視するポイントは何か。
回答: 地方創生2.0に基づく次期総合計画では「女性の活躍支援と子育て支援」「市民との共創による魅力づくり」「移住・定住のさらなる促進」の3点を重点とする。
質問8
若い女性に選ばれるまちづくりにターゲットを絞る考えはあるか。
回答: (市から明確な回答は無かった)
質問9
デジタル住民票NFTに取り組む考えはあるか。
回答: 今年1月に公式ファンクラブ「かいづふぁん」を設立し、関係人口の拡大を図っている。今後、デジタル住民票NFTやふるさと住民登録制度の動向を注視し、かいづふぁんとの連携について調査・研究する。
質問10
若い女性にターゲットを絞って資本を集中していく考えはあるか。
回答: 限られた行財政資源の中で重点をどの程度置くかは検討したいと考えている。
質問11
これまで女性が進出してこなかった分野(農業・建設業など)への参入を後押しする考えはあるか。
回答: 推進に向けて前向きに考えたい。
質問12
かいづふぁんの会員数と市内外の内訳が知りたい。
回答: 令和7年8月31日現在、会員数は549人に上る。内訳は県外253人、県内296人(うち市内188人・市外108人)である。
質問13
かいづふぁんの会員が実際に市を訪れているか、まちづくりに関わっているかの把握はできているか。
回答: 会員が市を訪れたかどうかについては把握できていない。
感想
無闇なリソースの投入に違和感
こどもの権利条例の制定について、議員の提案には違和感を覚えた。
こどもの権利を守る理念に異論はないが、現行の体制では解決できない具体的な課題が示されていない中で、多大な行政コストを投じて条例を制定する理由が見えない。
新しい条例の運用には、策定時だけでなく、その後の体制維持にも相応の予算と人員が必要となる。限られた行政リソースを優先度の高い課題に集中させるべき現状において、実効性の不透明な条例の制定を求める提案は、行政リソースの最適配分という視点を欠いているのではないかと感じた。
その点、市が安易に同調せず、必要性や実効性を慎重に研究するという冷静な判断は、現実的な行政運営として評価したい。
現実を直視しない対策
今回の質疑で最も強い不安を覚えたのは、女性の流出対策に関する議論である。
若年女性の流出理由として「地方に働きたい職場が少ない」ことが示されながら、解決策として農業や建設業への参入促進が議員から提案された。
しかし、統計を見ればこれらの業種の有効求人倍率は他職種に比べて突出して高く、男女問わず敬遠されている実態は数字として明白だ。
このような業種を「女性活躍」の出口にすえる提案には、ズッコケてしまう。さらに、市長がこの提案に対し「非常に良いアイデア」と好意的な反応を示した点には、認識と現実の乖離を感じ、思わず頭を抱えてしまう。
地方の若者流出は、女性に限らず、地方には若者が働きたいと思える職場が少ないことが問題の根幹である。その現実を直視しないままでは、いくら予算を投じても人口流出に歯止めをかけるのは難しいのではないだろうか。

