概要
海津市の令和7年第3回定例会の一般質問において、小粥努議員は「防災対策」について質問した。
市は全職員の防災士資格の取得を目標に掲げており、正職員の約3割がすでに資格を取得していることが明らかになった。今年度は市長自身も資格を取得するなど、組織全体の防災対応力の底上げは着実に進んでいる。
一方、自力避難が困難な市民を守る個別避難計画の作成完了率は9.6%(対象者2,727名のうち262名)にとどまっていることも示され、「誰一人取り残さない防災」の実現には依然として大きな隔たりがある。
質問と回答
質問1
令和4年第1回定例会の答弁で触れられた「防災スペシャリスト」の育成状況が知りたい。また、災害時に指揮が執れる職員を配置する体制づくりを進める考えはあるか。
回答: 育成状況については、内閣府主催の防災スペシャリスト養成研修に現在2名が受講しており、今年度さらに1名が受講予定で、うち1名は全コースを修了し地域防災マネジャーの資格を取得する予定である。体制づくりについては、現在、職員を自治体危機管理・防災責任者研修や防災気象情報の活用に関する研修など様々な研修に参加させているほか、今年度から全職員が防災士の資格取得にも取り組んでいる。専門的な研修を受講した職員は災害時に専門性を求められる職務に配置していく。
質問2
災害時の犠牲者を減らすにはいち早く避難することが重要だと考えるが、情報伝達の課題に対する認識と今後の取組が知りたい。
回答: 防災行政無線、市ホームページ、防災ウェブアプリ、メール配信サービスなど多様な方法で情報発信を行っている。防災ウェブアプリの登録者数が3,000人程度にすぎず、今後は高齢者が集まる会合やサロンでもアプリ登録を案内するほか、民生委員を通じて高齢者世帯へのチラシ配布も行っていく。
質問3
地域ごとの防災に関する取り組みの格差を解消するために、防災士の団体と市民が協働で防災訓練を実施できるとよいと思うがどうか。
回答: 地域ごとの取組に温度差が生じていることは重要な課題と認識している。今後は防災士会と定期的な意見交換を実施し、地域特性や市民ニーズを把握した上で、市内全域の防災意識の向上と防災活動の普及・定着に取り組んでいく。
質問4
福祉避難所での対応には誰が当たるのか。
回答: 福祉避難所は、海津総合福祉会館ひまわり、南濃総合福祉会館ゆとりの森、こども未来館ZüTTo、海津特別支援学校のほか、市内4つの介護事業所を指定している。福祉避難所の開設・運営は健康福祉部が中心に行い、保健師や介護福祉士などの職員を配置して要配慮者の避難生活を支援する。大規模災害時には福祉人材の確保が困難になるため、避難者の中で資格を有する方に支援を依頼するとともに、DWAT(災害派遣福祉チーム)の派遣を県に要請する。
質問5
個別避難計画の進捗状況と対象者が知りたい。
回答: 対象者は、要介護度3以上の認定者、身体障害者手帳2級以上で視覚・聴覚・肢体に不自由がある者、療育手帳A程度を所有する者、精神障害者保健福祉手帳1・2級を所有する単身者、65歳以上の独居者、そのほか市や自治会等が支援を必要と認めた者である。個別避難計画は、国の指針では令和3年から5年を目途に作成に取り組むこととされているが、令和7年8月現在、対象者2,727名のうち作成が完了しているのは262名にすぎない。計画が進まない理由として、本人から同意を得ることや、近隣住民から避難支援者として協力を得ることが難しいことが挙げられる。防災講話や防災訓練において計画の必要性を説明するとともに、自治会長や民生委員への周知も進めていく。
質問6
現在、職員で防災士の資格を取得している割合はどの程度か。
回答: 正職員の約3割が防災士資格を有している。本年度、新たに26名が合格し、合計が約100名になった。
質問7
職員だけでは発災時の避難所の早期開設に対応しきれないと考えるが、防災士会などと連携して各地区で役割分担できる仕組みをつくる考えはあるか。
回答: 避難所の開設には受入れ、パーティションの設置、支援物資の整理など多岐にわたる対応が必要であり、協力いただける方々は非常に貴重な存在と考えている。今後、防災士会と情報交換を行いながら、避難所の開設時に協働で行える具体的な内容について調整を進めていく。
質問8
防災ウェブアプリの登録者数が少ない点をどのように解消していくか。
回答: スマートフォンやデジタルツールの利用が難しい高齢者層の登録者が少ない点が課題である。防災訓練や防災講話の際に防災ウェブアプリをインストールしてもらい、防災行政無線の放送内容の確認や防災情報の収集方法を体験してもらう取組を行っていく。
質問9
令和5年度・令和6年度・今年度の防災訓練と防災講話の実施回数が知りたい。
回答: 令和5年度は防災訓練を5か所、防災講話を23か所で実施した。令和6年度は防災訓練を7か所、防災講話を33か所で実施した。今年度はこれまでに防災講話を8か所で実施しており、今後さらに防災訓練を3か所、防災講話を14か所で開催する予定である。
質問10
福祉避難所の開設から受入れまでの流れをもう少し詳しく教えてほしい。
回答: まず、小学校等の体育館を一時避難所として開設し、要配慮者については学校の教室などでスペースを確保して対応する。その後、福祉避難所の安全を確認した上で開設し、要配慮者を受け入れる。
質問11
DWATなどの応援が届くまでの間、職員だけで福祉避難所の対応に当たることは難しいのではないか。
回答: 職員も被災するという観点から人的に不足する懸念がある。その場合は要配慮者の家族間での見守りや介護への協力を依頼することも想定し、専門チームの支援が届くまで運営を継続していく。
質問12
個別避難計画の作成を希望する場合、どのような形で申し出ればよいか。
回答: 個別避難計画の申請窓口は、介護保険の要介護者や独り暮らしの高齢者の場合は高齢介護課に、障がいのある方や自治会などで支援が必要と把握された場合は社会福祉課になる。独り暮らしの高齢者については、民生委員の見守り対象者となっている場合があるため、地区担当民生委員と連携する方法も考えられる。今後、民生委員の定例会等でも周知していく。
質問13
市長が今年度に防災士の資格を取得されたとのことだが、その感想や思いを聞かせてほしい。
回答: 被災地が発災直後に直面する状況や、事前の備えがいかに大切かを学んだ。全ての講座を受講することはできなかったが、本市の防災・減災対策を預かる立場として非常に参考になる有益な講座だった。学んだことを今後の取組に生かしていく。また、個別避難計画の策定においては、内閣府なども福祉避難所への直接避難を推奨しており、その点についても今後しっかりと取り組んでいく。
感想
市長が自ら示した本気
市長が防災士の資格を取得したことは、全職員の取得を目標に掲げる中で取り組みの本気度を示す重要な行動だと感じた。
組織のトップが率先して行動することで、職員全体の意識も高まり、資格取得の促進が期待できる。
また、市長自身が防災士の知見を持つことで、災害時の意思決定や対応においてもより的確な判断ができるようになるだろう。

