概要
海津市の令和7年第3回定例会の一般質問において、古川理沙議員は「災害に対するレジリエンス(*1)の強化につながる行財政運営」と「次代に続く活力あるまちづくりを実現する女性健康支援」の2点について質問した。
レジリエンス強化については、議員が行財政改革プランにレジリエンス強化の視点を組み込むことや、フェーズフリー(*2)備品の整備を提案した。市は、早期の災害復旧を図るため、行財政改革プランにおいて防災DXの推進や防災士・市民との協働による取組を検討する姿勢を示した。また、フェーズフリー備品の整備についても、マルチパーパスモビリティー(*3)やホワイトボードとベッドの兼用備品など、市場動向を注視しながら導入を検討すると答弁した。
女性健康支援については、議員が妊活検査費用の助成やフェムテック(*4)の活用を求めた。市は、妊活検査費用の助成について来年度の予算編成過程で検討することを表明したほか、来年度から幅広い年代の女性が体調管理できるアプリの導入準備を進める方針を示した。
*1: レジリエンスとは、災害などのリスクに対する抵抗力や、困難を乗り越えて回復する力を意味する。
*2: フェーズフリーとは、平時と非常時を区別せず、日常生活の中で使いながら災害時にも機能する設計思想である。
*3: マルチパーパスモビリティーとは、平時は公務用車両・イベント時の救護室・移動市民窓口として、災害時はトイレルーム・ボランティア受付・対策本部補助拠点として機能する多目的車両である。
*4: フェムテックとは、Female(女性)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、月経・更年期・妊娠・出産など女性特有の健康課題をテクノロジーで解決するサービスの総称である。
質問と回答
質問1
行財政改革プランに、災害レジリエンス強化の視点(早期回復・復旧を意識した業務運営)を取り入れてほしい。
回答: 早期の災害復旧を図るため、行財政改革プランにおいても防災DXの導入や防災士・市民との協働による取組を検討する。
質問2
フェーズフリーの観点を用いた備品整備を進めてはどうか。
回答: マルチパーパスモビリティーや、平時にはホワイトボード・非常時にはベッドになる備品など、市場動向を注視しながら導入を検討する。
質問3
イベント時に配付する記念品等に、災害時に利用できる防災グッズを取り入れてはどうか。
回答: 既にアルミシートや携帯トイレなど実用性の高い防災関連グッズを配付しており、今後も継続する。
質問4
行財政改革プランにレジリエンスの視点を盛り込む際、早期回復・復旧を職員が意識できるよう取組内容の書きぶりや優先順位を工夫してほしい。
回答: 災害後の早い回復・復旧につながる組織強化も重要と認識しており、職員が意識できるよう行財政改革プランの取組内容の表現などを工夫して考えていく。
質問5
2027年末の蛍光灯の生産終了に伴い、LED化を進める際にはフェーズフリーの視点を取り入れてほしい。
回答: 電池内蔵型LED蛍光灯など停電時にも機能する製品の存在を把握している。今後もフェーズフリーの観点を踏まえ、様々なアイテムの調査・研究を進めていく。
質問6
妊活検査費用(妊娠・出産に備えて自身の健康状態を把握する検査)への助成制度が必要ではないか。
回答: 全国の事例から本市でもニーズがあると見込んでいる。国の概算要求の動向も踏まえ、来年度の予算編成過程において検討する。
質問7
フェムテックを活用した健康支援に取り組んでほしい。
回答: 今年度から母子健康手帳アプリ「かいづっこナビ」を導入したほか、来年度から幅広い年代の女性の健康状態を管理できる健康管理アプリの導入に向けて準備を進める。
質問8
くらしの保健室「ふらっと♪」を教育機関との連携でさらに周知し、若年層にも届くようにしてほしい。
回答: 現在の利用者は65歳以上が8割を占め、若年層の利用はほとんどない。若年層向けの企画を充実させるとともに、中学校の命の授業やがん教育の場でくらしの保健室の存在を周知する。
質問9
妊活検査費用の助成は、不妊状態になる前に検査するという「予防的観点」から検討するという認識でよいか。
回答: 不妊治療助成の申請は増加傾向にある。予防的観点から課題解決を図れる妊活検査費用の助成については、来年度の予算編成過程においてしっかり検討していく。
質問10
大塚製薬株式会社との包括連携協定に基づく女性健康セミナーを今年度も実施するか。
回答: 今年度については、現在調整中である。
質問11
大塚製薬株式会社のホームページにある女性健康情報ページへのリンクを市ホームページに設置してほしい。
回答: 大塚製薬株式会社と早速協議し、御理解をいただけたら若年層・女性支援につながる内容のページを市ホームページから見られるよう準備する。
質問12
子どもたちが卒業後も相談できる窓口があることを認識できるように、学校で生徒にくらしの保健室「ふらっと♪」の存在を周知してほしい。
回答: 中学校を卒業した後も心や体の心配事を相談できる場所として、くらしの保健室「ふらっと♪」を知っていることは若者がキャリアデザインを描く大きな支えになる。学校における様々な機会を生かして生徒への周知を図っていく。
感想
「いつか役に立つ」と「いつも役に立つ」の両立
「フェーズフリー」は、合理的で持続可能な解決策だと感じた。
最大の利点は、防災専用の備蓄を必要とせず、限られた予算・保管スペースを有効活用できることにある。普段から使用することで点検が自然に行われ、有事には確実に機能を発揮する。
フェーズフリーの発想は、備品整備にとどまらない。能登半島地震では地元業者だけでは工事が追いつかず、発災から4か月を経ても水道が復旧していない住宅があった。その教訓を受け、海津市が本定例会に上程した「市外・県外業者の参入を認める下水道条例の改正」は、平時の制度設計が有事のレジリエンスを決めるという点で、まさに同じ発想といえる。
限られたコストの中で最大の防災効果を引き出す鍵は、「いつか役に立つ」専用の備えと「いつも役に立つ」日常の設計を、いかに両立させるかにある。
プレコンセプションケアという視点
今回、プレコンセプションケアという言葉を初めて知った。
プレコンセプションケアは、性別に関係なく、健康や性に関する正しい知識を得て、人生設計をしていくという考え方だ。
正しい知識へのアクセスは、本人だけでなく、家族やパートナーにとっても重要な意味を持つ。海津市における妊活検査費用の助成や健康管理アプリの導入が、その環境づくりの一歩になることを期待したい。
今回の質問によって、来年度の予算編成で妊活検査費用の助成について検討する姿勢が示されたほか、来年度から健康管理アプリの導入を進める方針が示された。古川理沙議員が繰り返しこのテーマを提起してきた成果であり、市の前向きな姿勢は評価できる。
国の動向を注視しながら検討するという部分で予算化が先送りにならないよう、来年度の予算編成に注目したい。

