概要
海津市の令和7年第3回定例会の一般質問において、浅井まゆみ議員は「子どもを性被害から守るための取組」について質問した。
本市の児童・生徒のスマートフォン保有率(小学生約30%、中学生約80%)が示され、SNSトラブルや性被害・盗撮を含むデジタル環境のリスクから子どもを守る必要性が提起された。
答弁では、学習用タブレット端末の多層的なセキュリティ対策(フィルタリング・QRコードによる本人認証・操作ログ記録等)、全教職員を対象とした性暴力防止研修(海津警察署講師による管理職研修含む)、毎月のアンケートによる相談体制が確認された。
子どもを被害者にも加害者にもさせないために、学校・家庭・地域が連携して社会全体で子どもを守っていくことの重要性が改めて示された。
質問と回答
質問1
本市の児童・生徒のスマートフォン保有率はどのようになっているか。
回答: 令和6年度の調査によると、小学生が約30%、中学生が約80%で、県全体の保有率とほぼ同水準である。
質問2
これまで児童・生徒の間でスマートフォンでのトラブルはあったか。
回答: 昨年度、SNSによるトラブルが小学校で3件、中学校で4件確認されており、主な内容は誹謗中傷や嫌がらせである。
質問3
学校のセキュリティ環境はどうなっているか。
回答: 児童・生徒の端末パスワードはQRコードで管理し、本人も知らない仕組みとすることでなりすましを防止している。メール・SNSは使用できず、インターネットはフィルタリングで制限されている。データは学校外へ持ち出しができない。操作ログを教師が確認できる。
質問4
法改正やSNS上の画像要求が犯罪になることを、児童・生徒に啓発しているか。教職員への研修は行われたか。
回答: 学年に応じた生命の安全教育・情報モラル指導を実施している。夏休みに全管理職を対象に海津警察署の講師による盗撮防止研修を実施した。
質問5
学校で性被害が起こった場合の対応と相談支援体制はどうなっているか。
回答: 各学校で性被害発生に備えた対応マニュアルを作成し、警察や子ども相談センターとの連携体制を構築している。その際には、被害者の人権尊重・安全を最優先として迅速に対応する。学校以外の相談窓口についても児童・生徒に周知している。
質問6
コドマモのようなアプリを学習用タブレットに導入したり、保護者へ啓発したりしてはどうか。
回答: 学習用タブレットには既に多数のセキュリティ対策を施しているため、現時点でコドマモ等の導入は予定しない。保護者への啓発については、入学説明会や家庭教育学級での情報モラル学習に加え、性被害防止アプリの紹介も通じて学校と家庭が協力する取組を強化する。
質問7
SNSによるトラブルが起こったとき、学校はどのように対応しているか。情報モラル教育の指導内容も教えてほしい。
回答: トラブル発生時は保護者・外部機関と連携して迅速に対応している。全小中学校で児童・生徒・保護者を対象に、SNSの危険性や正しい使用方法を具体的な事例で指導している。携帯電話会社の講師を招くなど多様な立場からの話を聞く機会も設けている。
質問8
QRコードは他の児童・生徒が容易に読み取れるのではないか。対策・指導はされているか。
回答: QRコードは他の児童・生徒が勝手に触れないよう管理している。自分のQRコードを貸与しない、他人のQRコードを使用しないよう指導している。
質問9
フィルタリングで具体的に何が制限されているか。
回答: 暴力・犯罪・売買が伴うもの・娯楽性が高いもの・性的なものなど多くの分野で制限している。
質問10
フィルタリングを突破して有害サイトを見ることは可能か。
回答: フィルタリングの設定は教育委員会が管理しており、児童・生徒が変更できない仕組みのため、突破はできない。
質問11
タブレットを自宅に持ち帰って撮影した場合の扱いはどうなっているか。
回答: 学習目的での自宅撮影は可能である。ただし自宅で撮影した画像は学校の授業でのみ使用できる設定で、校外への持ち出しはできない。
質問12
全教職員を対象とした性暴力防止研修の具体的な内容が知りたい。
回答: 夏休みに全校長が参加し、盗撮事件の重大性・最近の手口・発生させないための環境づくりを学んだ。校長が全職員に内容を伝達し、校内環境の確認と早期発見のための心構えを改めて確認した。
質問13
児童・生徒を対象とした心のケアに関するアンケートは実施されているか。
回答: 各学校で毎月1回、悩み事・心配事についてのアンケートを実施している。内容をもとに相談・スクールカウンセラーや外部機関との連携を行っている。
質問14
性被害に遭った場合の学校以外の相談窓口はどこか。
回答: 全国統一で24時間対応の「24時間子供SOSダイヤル」、岐阜県教育委員会の「教育相談ほほえみダイヤル」、市教育委員会の「総合教育センター」があり、長期休暇中はSNSで相談できる窓口もある。児童・生徒に周知している。
質問15
教職員による児童・生徒への性暴力防止のため、空き教室の施錠の徹底と、密室での1対1個別指導の禁止は行われているか。
回答: いずれもこれまでも実施しており、今後も継続して徹底する。
質問16
教職員が相互にチェックし合い、性暴力につながる言動を管理職に報告する仕組みと、市教育委員会への相談窓口が必要ではないか。
回答: 各学校で管理職に相談・報告しやすい雰囲気・体制をつくるよう心がけている。学校外では県教育委員会・市教育委員会等に複数の相談窓口を準備している。
質問17
性教育で自衛を強調すると被害者が自責感を抱くリスクがある。「あなたは悪くない」と伝えることへの見解が知りたい。
回答: 被害者が罪悪感・無力感を持つリスクを認識している。「悪いのは100%加害者」「被害者を責めてはいけない」「自分を傷つけない」ことを踏まえて生命の安全教育に当たる。児童・生徒が自分の意思で声を上げられる力を育んでいきたい。
感想
教育のデジタル化に潜む死角
学校教育のデジタル化の真の目的は、学習の効率化によって「教育の余白」を生み出すことにある。その余白こそが、子どもの心を育む時間となり、教員や保護者が一人ひとりの子どもと深く向き合うための貴重な時間をつくる。
しかし、その一方でSNSトラブルや性被害といった、かつては教室の外にあったはずの新たなリスクが入り込んでくることも否定できない。利便性を追求するあまり、子どもたちの安全や心の余裕を犠牲にしてはならない。反対に、過剰にリスクを恐れてデジタル化を拒み、子どもたちの学びの機会を奪うことも本末転倒である。
この利点と欠点が表裏一体であるジレンマに向き合う際、仕組みによる対策を積み重ねることは不可欠だ。今回確認された多層的なセキュリティ対策は、デジタルの恩恵を最大化しようと努める市の誠実な姿勢として評価したい。
同時に、仕組みだけでは限界があることも忘れてはならない。これを学校だけの責任にすべきではない。家庭や社会全体が、子どもを守るという意識を主体的に持つことが何より大切だ。
生徒・教員・保護者がそれぞれの立場で意識を合わせ、共にリテラシーを醸成していくこと。その積み重ねこそが、制度の隙間を埋め、子どもたちの未来を守る土壌となるはずだ。

