令和7年第2回定例会の一般質問において、寺村典久議員は「宝暦治水270周年」と「市制20周年」の記念事業の全容と意義を質した。
答弁では、リニューアルした「木曽三川輪中ミュージアム」でのプロジェクションマッピングや、人気アーティストを招く野外音楽フェスなど、華やかな計画の数々が明らかにされた。
寺村議員は、これら市民のための祝賀事業が市政の独断で進められている現状を厳しく指摘した。当事者である市民が置き去りになれば、記念事業の正当性に根本的な矛盾が生じかねない。
今回の質疑は、事業の詳細を明らかにしただけでなく、市と市民の理想的な協働のあり方を改めて問い直すものとなった。
質問と回答
質問1
これまでの宝暦治水と薩摩義士顕彰の歴史を踏まえ、今後の顕彰活動の計画はあるか。
回答: 宝暦治水完工270周年の節目に今年3月にリニューアルした「木曽三川輪中ミュージアム」を拠点に、プロジェクションマッピング「木曽三川ストーリーズ」や体験型プログラムを通じて、薩摩義士の偉業を後世に伝える。また、宝暦治水史蹟保存会との共催イベントや市民公募の記念事業を通じて顕彰活動の輪を広げる。さらに市長自らも積極的に情報発信していく。
質問2
宝暦治水270周年記念事業(講演・企画展等)の具体的な内容、期日、期待される成果は何か。
回答: 10月21日から11月9日まで木曽三川輪中ミュージアムで開催される企画展では、難工事に関する史料や、総奉行・平田靱負の遺品である小刀、肖像画などが展示される。あわせて10月26日には、講演会と講談会を実施予定である。また、市民公募事業として、NPO法人による宝暦治水の紙芝居制作や、美扇会による薩摩義士をテーマにした日本舞踊の演舞など、地域一体となった顕彰活動が展開される。
質問3
学校教育現場における宝暦治水と薩摩義士顕彰に関する現状の取組が知りたい。
回答: 小中学校において宝暦治水や薩摩義士に関する学習を推進している。小学校では4・6年生の社会科の授業や、4年生の総合的な学習の時間を活用している。中学校では鹿児島県霧島市との交流事業として、生徒代表による現地への訪問と受け入れを相互に行っている。また、今年度は新たな取組として、小中学生による木曽三川輪中ミュージアムの見学も行う。
質問4
近年、市外出身の職員が増加しており、薩摩義士の功績を知らない職員に対して、薩摩義士に関する研修を行う考えはあるか。
回答: 市職員への研修については、木曽三川輪中ミュージアムのリニューアル直前に職員や教員向けの見学会を実施したほか、新規採用職員の研修にも同ミュージアムへの訪問を組み込み、学習機会を設けている。
質問5
鹿児島県との職員交流を経験した教員を、他の教員向けの研修講師として活用する考えはあるか。
回答: 鹿児島への派遣経験がある教員は自身の体験を他の教員や児童、生徒に伝えることで知見を共有している。なお、職員の研修については、夏休みに市内の宝暦治水などに関わる史跡を巡って話を聞くという研修を行っている。
質問6
市制20周年記念事業である「野外音楽フェスティバル」の開催経緯、事業内容、期待される具体的な成果や効果を知りたい。
回答: 開催経緯については、市制20周年事業の基本目標(まちの魅力発信、新たな価値創出、シビックプライドの醸成)に基づき、市内外の幅広い世代が交流できる場として野外音楽フェスティバルの開催を決定した。事業内容については、木曽三川公園センターを会場に、シティアンバサダーの足立佳奈氏ら人気アーティスト6組程度を招き、入場無料で開催する。地元の魅力を発信する「海津PRマルシェ」も同時開催する。期待される成果については、来場者数7,000人を目標に、市民の地元愛を深めるとともに市外への知名度向上を図る。継続開催を通じて「音楽フェスのまち」としてのイメージを定着させ、移住定住へと繋げるプロモーション効果を期待する。
質問7
市制20周年記念事業である絵本作成事業について内容、コンセプト、現況をお答えください。
回答: 子どもの頃から郷土愛を育むため、海津市出身の絵本作家・はっとりひろき氏に市内の名所を巡る絵本の制作を依頼した。完成した絵本は市内の子どもたちへ配布するほか、名所の解説付きで一般販売を行い、全国の親子が海津市を訪れるきっかけとなることを目指す。
質問8
市民協働事業の周知・募集にあたり、市としてどのような働きかけや支援を行っているか。
回答: まちづくり協働センターや商工会を通じて、市民団体や民間事業者へ参画を呼びかけているほか、特設サイトやSNSで広報を行っている。今年3月の募集開始以降、これまでに7事業が決定しており、最終的には十数件の実施を見込む。
感想
費用対効果と市民不在の懸念
今回の質疑で示された「野外音楽フェスの開催が移住定住に繋がる」という市の期待については、安直すぎるのではないかと感じた。
移住という重大な決断には、生活基盤や支援策といった多角的な要素が不可欠だからだ。
知名度の向上を目的に野外音楽フェスを開催するにしても、どれほどの費用対効果をもたらすのか。慎重に検討した結果が示されていない現状では、単なる思いつきのように映ってしまう。
私個人は、市民が野外音楽フェスの開催を望むならば、移住に直結しなくても公金を投じる意義はあると思う。
しかし、この問題の本質は、その肝心な「市民の希望」を確認した形跡が見えない点にある。
公金で行われる事業である以上、その投資は真に市民の願いに沿い、長期的な地域発展に寄与するものでなくてはならない。
市には、事業の費用対効果を精査することはもちろん、市民との向き合い方を立ち止まって考えてもらいたいと思う。

